ポケモン×サンスポ!?
特別号外はいかにして
生まれたのか

サンケイスポーツ営業局

「ポケモン世界大会 開幕」。こんな見出しがサンケイスポーツに大きく踊りました。ゲームの話ではありません。現実の話です。

2023年8月、横浜市で日本初開催されたポケモンバトルの世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023」でのことです。実はこの新聞は「特別号外」なのです。同大会を盛り上げようと主催者の株式会社ポケモンと産経新聞社がタッグを組みました。11日には全都道府県で計99カ所(※台風7号のため沖縄は中止)、同14日には大会結果を掲載した号外を3大都市圏25カ所で配布。両日とも多くの場所で用意した部数がたちまちなくなりました。通常の号外配布は主要都市だけで、全都道府県というのは新聞業界でも異例中の異例といえる規模でした。

仕掛けたのはサンケイスポーツ。企画からレイアウト作成、配布まで全て行いました。

スポーツだけではない、スポーツ紙ならではの挑戦が、そこにはありました。

営業局長は元記者
多様な職種があるからこそ実現

ポケモン社とのコラボレーションは今回が初めてではありません。きっかけはスマートフォンゲーム『ポケモンGO』でした。サンスポの読者には中高年層が多いことから「幅広い世代で人気を集めるポケモンGOとコラボできれば相乗効果が見込める」と考えたそうです。そこでサンスポ営業局局長の田代学さんが自らの人脈を使い、ポケモン社の最高執行責任者(COO)の宇都宮崇人さんとアポイントを取りつけました。

田代さんは入社から営業一筋の大ベテラン・・・ではありません。実はサンスポ編集局の記者出身。野球担当歴が長く、中でも米国に13年駐在して、米メジャーリーグでイチロー選手や松井秀喜選手らを取材。全米野球記者協会の理事やワールドシリーズの公式記録員を日本人記者で初めて務めた経験もあります。田代さんは、記者時代に培った人脈をたどり、ポケモン社とつながることができたと振り返ります。営業と記者、一見すると関係のないキャリアのように見えますが、意外なところでつながります。多くの職種を抱える新聞社ならではのエピソードです。

「大会結果を報じる号外はできますか」

デジタル先端企業でもあるポケモン社に対して当初はさまざまな提案をしたそうですが、意外にも関心を示されたのは〝紙〟でした。「実際に手に取ってもらえるのがいい」とバーチャルな世界にいるポケモンを紙面化し、号外として手渡しできることに魅力を感じてくれたのです。2019年4、5月にポケモンGOのイベント告知をする号外を、初の共同企画として相次いで発行しました。

号外は、サンスポのスポーツ紙らしいインパクトのあるレイアウトや、修正依頼があると翌朝には差し替えを届けるという新聞社ならではの24時間態勢の迅速対応が評価され、クリスマスなどのイベントに合わせて受注を重ねてきました。原稿は、田代さんが記者時代の経験を生かして執筆。現在もポケモンGOの魅力を多角的に分析するサンスポ紙面上の大型企画『ポケモンGO調査隊がゆく』が不定期で掲載されています。

号外は、ポケモン社が地方自治体に遊具を寄贈した公園の開園日や、ポケモンを描いたマンホール蓋の特集でも発行。このような実績を重ねてきた中で、ポケモンバトル世界大会の依頼がありました。同大会は50以上の国と地域から2000人以上の代表が参加する世界的なイベント。日本初開催ということもあり、ポケモン社から「大会結果を報じる号外が作れますか」と打診がありました。

田代さんは「もちろんできます」と即答。さらに「せっかくなので大会を広く知ってもらい、ライブ配信を見てもらえるように開催の告知もしませんか」と提案しました。先方は「2つもできるんですか」と驚いた様子だったそうです。

「海外への展開計画」も進行中!?

開幕日に配布された号外は、人気アニメ映画の制作会社がポケモンのイラストを表面全体に描きおろし、裏面にはポケモン好きを公言する東京五輪スケートボード金メダリスト・堀米雄斗選手のインタビューを掲載。さらに大会の見どころなどが紹介されました。

当日は各所で配布開始前から長蛇の列ができ、大会会場に近い桜木町駅前では30分で用意していた枚数を配り終えてしまいました。出来栄えも好評で、来場したポケモン社海外法人の幹部から「本国に持ち帰って参考にしたい」という要望が上がり、急きょ届けたそうです。

閉幕翌日の号外では、配布までのスピードを評価されました。最終日の結果が出ると、取材→原稿と写真を入稿→レイアウト→印刷→配送という工程を翌朝までに完了。誤字脱字などのミスもなく、「これだけの紙面を短時間で作ってしまうところは、さすが新聞社ですね」と感心されました。

ポケモンは世界中にファンがいます。今後の同社とのコラボについて、田代さんは「号外を海外展開できたら面白い」と野望を口にします。

新聞には「現実の難しい話題」を書いているイメージがあるかもしれませんが、ラッピングなどの広告紙面や特別号外では、ポケモンを始め様々な企業とのコラボレーションを実現しています。常識にとらわれない、柔軟な発想で、これからもユニークなチャレンジをしていきます。