社長メッセージ

top message

株式会社産業経済新聞社

代表取締役社長

コンドウ テツジ 近藤哲司

産経新聞社の将来像をどう描いていますか

「デジタルの世界で勝つ、勝つための挑戦を続ける」というのが、私の考える方向性です。新聞社の存在意義は報道にあるーという軸は変わりません。これまでは報道のツールとして新聞という紙の媒体が大きな役割を果たしてきました。しかし、世界中のニュースをインターネットやスマートフォンで無料で読める今、紙にこだわり続ければ、会社に未来はありません。軸である報道を守るために、会社を大きく変える必要があると考えています。

デジタルを活用して産経新聞のメディアとしての価値を高めていけるか、が最大のポイントになります。ニュースを伝える手段は文字などテキストコンテンツだけではなく「Podcast」などの音声、「YouTube」などの動画コンテンツといったより裾野が広い世界に広がっています。こうした巨大なマーケットの中で、これまで産経新聞社が培ってきた「信頼性」「信用力」「影響力」を活かしたコンテンツづくりを確立できるかが、勝負所と思っています。

私は、デジタル業務を担う子会社「産経デジタル」の役員や社長を務め、新聞社トップとしては異色のキャリアを歩んできたと思います。15年前に今や他のメディアを含め当たり前になっている「WEBファースト」という考えを他社に先駆けて打ち出し、総合ニュースサイト「IZA」やマイクロソフトと共同運営した「msn産経ニュース」の立ち上げを主導しました。こうしたデジタル分野での経験を生かし、デジタルの世界で勝つためのアクションを推し進めていきたいと思っています。

これから求める人材像をお聞かせください

「好奇心旺盛」「フットワークが軽い」「粘り強い」「何でも挑戦する」「自分で物事を考えられる」という要素のうち、何か一つでも持っている人に働いてほしいと思っています。

ニュースの発掘には、やはり好奇心とフットワークが必要です。また、デジタル分野などで新たなビジネスの仕組みを作り出すには、挑戦し続けるベンチャー精神や協業先との粘り強いやり取りが欠かせません。そして何よりも、言われてから動くのではなく、自ら率先して物事を考えなければなりません。

私が産経デジタルの取締役として「msn産経ニュース」を立ち上げた際は、マイクロソフトとの交渉担当責任者でした。交渉を始めてから合意するまで5カ月くらいかかったのですが、交渉が難航して3回くらい破談しそうになったことを憶えています。それでも、お互い粘り強く交渉し、最後の調印までこぎつけました。まったく違う世界の人達と仕事をするのは大変ですが、それでも喧々諤々で意見を交わしながら仕事をつくっていくのは、本当に面白かったです。異業種の人達も含め、数えきれない方々と出会い、交流したことで、人間としても成長できた気がします。

繰り返しになりますが、デジタルという国境のない大きな「海」が今、目前に広がっています。世界の誰もが思いついてないアイデアがまだたくさん埋もれており、やろうと思えば何でもできます。裏返せば、すごくチャレンジしがいのある分野だと思います。新たなアイデアを生み出すためにも、よく考える人であって欲しいです。人の意見に左右されず、自分の頭で考え、自分なりの意見、私論を述べられるよう、常に考え抜くことが、変化の激しい時代を生き抜くカギになるだろうし、とても重要な要素です。

産経新聞社で働く「面白さ」はどこにありますか

記者であれば、誰も知らない事実や出来事に肉薄し、そして実際にニュースを発掘して伝え、世の中を動かすという喜びが仕事の醍醐味です。一方で、仕事に大きな影響力があるということは、同時に厳しさもあると思います。事件や事故があった際などは誰もがスマートフォンですぐ発信できる時代ですが、記者は近所の人がSNSでは発信できない事実に基づいた正確な情報、事件や事故の背景をしっかり調べて深掘りして報じることが求められます。

営業では、紙面広告だけではなく、ネット向けに「こういうことが出来ます」というアイデアをお客さまに提案して、新しい仕事をとっていく課題解決力が求められています。このほか、イベントを手がける事業、販売そして総務、人事、経理などの管理・間接部門もあり、いずれの職種の社員でも、社会的に影響力の大きい報道機関であることを常に意識して働いています。新聞社が転換期を迎える中で、社員には新しいメディア像やモデルを創ってくれることを期待しています。

社風は昔から自由で、やる気と実力さえあれば、若手でも活躍できる面白い会社です。社員にも「会社が何をしてくれるか」ではなく、仕事は自分で見つけるものといったムードがあります。チャレンジ精神旺盛な人にとっては魅力的な会社だと思います。

メディアとしての産経新聞の特徴は何でしょうか

「産経は民主主義と自由のためにたたかう」。会社の方針を示した「産経信条」の一番目に、こう書かれています。日本を愛し歴史に誇りを持つ「正論路線」。何事にもおもねらず、事実に基づいて主張すべきことをはっきり主張する「産経ジャーナリズム」。これらは産経新聞の報道の一貫した柱で、言論・報道の世界ではっきりとモノを言う産経新聞は、小粒であっても強い存在感を発揮していると自負しています。2023(令和5)年は産経新聞に「正論」欄ができ、月刊「正論」が創設されてから50年の節目でもあります。複雑な国際情勢の中で、産経新聞の「正論路線」の重要性はさらに高まっています。

ネットのポータルサイトやSNSを通じて簡単に世界中のニュースにアクセスできる一方、真偽不明の情報やフェイクニュースも飛び交っています。新型コロナウイルス感染症の問題やウクライナ報道でもこうした怪しい情報が見られました。どこの誰が書いたかさえ分からない情報に社会が惑わされる時代です。だからこそ、取材現場に足を運んだり、裏付け取材をしたり、何人もの目でチェックし、時間とお金をかけて発信される新聞社の役割はますます重要になっています。私たちはこれまで以上に国民の「知る権利」に応え、民主主義を支えていかなければなりません。

2023年で、産経新聞は創刊90周年を迎えました

90周年は日本中の新聞社、特に全国紙の中では後発です。もともと新聞販売店主だった前田久吉さん、後に東京タワーを建てた人ですが、彼が産経新聞の前身となる「日本工業新聞」を大阪で創刊したのが1933 (昭和8)年です。そして1942(昭和17)年に日本工業新聞を中心に名古屋以西の経済紙をまとめ、産経新聞となりました。東京で発行を始めたのは、戦後の1950(昭和25)年のことです。

後発ゆえ、世間の常識を打ち破る取り組みに挑戦してきました。1969(昭和44)年に初めて駅売りのタブロイド紙「夕刊フジ」を創刊したのも産経新聞です。サンケイスポーツを東京で発行し始めたのは、東京オリンピックの前の年、1963(昭和38)年のことでした。

他のスポーツ紙はすでに10年以上前に東京で発行しており、サンスポは周回遅れの戦いを強いられましたが、チャレンジ精神を発揮し、今では即売部数でトップ争いを展開しています。

挑戦する気持ちをもった社員の皆さんと、10年後の創刊100年の頂きを目指したいと思います。