SDGsの取り組み

SDGs(持続可能な開発目標) 今、未来のために

産経新聞社は令和2(2020)年10月、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、国連が世界の主要な報道機関などに参画を呼び掛けている「SDGメディア・コンパクト」に署名しました。引き続き持続可能な社会の実現に向けた多様な活動や意義を発信するとともに、さまざまな事業を通じて自ら実践していきます。その取り組みの一部をご紹介します。

心臓病の子供を救う「明美ちゃん基金」

産経新聞社の提唱で昭和41(1966)年に設立された「明美ちゃん基金」は、半世紀を超えて、心臓病に苦しむ国内外の子供たちに、医療という「未来へのパスポート」を渡し続けてきました。貧しさや、置かれた環境のため医療の手が届かない心臓病の子供たちを救う―。これが基金の目指す道です。
「貧しいがゆえに死なねばならぬか」。昭和41年6月7日、サンケイ新聞(現・産経新聞)に、こんな見出しの記事が掲載されました。
内容は、生まれつき心臓の心室の壁に穴があいている鹿児島県の少女、伊瀬知明美ちゃん=当時(5)=が、貧しさゆえに手術を受けられない、というものでした。すると読者から「明美ちゃんを救って」という声が多数上がり、産経新聞には手術費をはるかに上回る善意が寄せられました。これをきっかけに「明美ちゃん基金」が誕生、明美ちゃんは適用第1号として無事手術を受けることができました。
以降、基金は経済的に恵まれない心臓病の子供たちへの支援を次々と実施。その後は海外の子供にも支援の輪を広げてきました。設立以来54年間で基金が救ってきた子供は約500人。海外の子供は21カ国にのぼります。
近年は、国内で心臓移植を受けた子供たちを対象に、提供された臓器の搬送費や、医療費以外の諸費用などの援助も行っています。
さらに、平成27(2015)年にはミャンマーの国立病院と覚書を結び、日本人医療団による、現地医療従事者への技術指導と子供たちへの治療を柱とした医療支援もスタート。これにより現地の医療レベルは劇的に向上し、以前は行えなかった手術や治療が可能になりました。
医療団が手術・治療した子供の治療費は全額基金が負担。さらに現地医師らを日本に招き長期研修も実施しています。ミャンマーの医師らと深いパートナーシップで結ばれた活動は同国政府からも評価され、令和2(2020)年には保健・スポーツ省から感謝状が授与されました。

明美ちゃん基金が適用され、13歳でカテーテル治療を受けたミャンマーのエー・ビー・ニョーさん(左)。心臓病から劇的に回復した=2020年2月14日、同国のヤンゴン(萩原悠久人撮影)

明美ちゃん基金について、詳しくは こちら


不用衣類の再利用でパラスポーツ応援「ふくのわプロジェクト」

まだ着られる不用衣類を家庭などから寄付してもらい、障害者スポーツを応援する「ふくのわプロジェクト」。平成28(2016)年のスタートから7年目を迎えた令和4(2022)年4月末現在で累計600トンの衣類を回収、約1000万円がパラ水泳連盟・パラパワーリフティング連盟など5つの障害者スポーツ団体に寄付されました。

集まった衣類は、1キロ当たり7円(提携倉庫に直接送付の場合は10円)で専門業者に買い取られ、その収益金が障害者スポーツ団体に寄付される仕組みです。衣類はマレーシアに運ばれて現地で選別され、世界15カ国で再販売されます。
素材やデザインが多様な衣類は、古紙やペットボトルなどに比べてリサイクル(再資源化)率が高くありません。環境省の「ファッションと環境調査」によると、日本では年間約48万トン、大型トラックで換算すると毎日130台分もの衣類がごみとして焼却・埋め立て処分されています。ふくのわプロジェクトでは、衣類のリユース(再利用)を促進して、二酸化炭素(CO2)の排出抑制に貢献しています。
回収活動は首都圏を中心に自治体や企業、商業施設、学校などにも広がっています。令和2(2020)年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、一時ストップ。こうした状況に対応し、新たに自宅などから直接提携倉庫に送れる宅配回収キット「おうちでふくのわ」の試行販売を始まりました。キットの制作や梱包作業では障害者団体や福祉事業所と連携しています。また、パラアスリートと児童・生徒が一緒に競技を体験する場の創出や、環境や共生社会について学ぶ出張授業にも力を入れています。これまでのべ400校がふくのわプロジェクトに参加しています。

日本から送られた中古衣類を仕分けするマレーシアのスタッフ


産業との共生図る事業を顕彰「地球環境大賞」

フジサンケイグループ(FCG)が主催する地球環境大賞は、「産業の発展と地球環境との共生」を目指し、地球温暖化防止や循環型社会の実現に寄与する技術・新製品の開発などを進めた企業・団体を顕彰しています。
29回目を迎えた令和2(2020)年は、自然災害時に被災した建物の棟数などをリアルタイムで予測する「cmap.dev(シーマップ)」を共同開発し、ウェブサイトで無償公開したあいおいニッセイ同和損害保険、エーオンベンフィールドジャパン(現エーオングループジャパン)、横浜国立大が大賞を受賞しました。
この賞は世界自然保護基金(WWF)ジャパンの特別協力を得て、平成4(1992)年に創設。これまでに289社・団体が受賞しています。当初は産業界のみを顕彰対象としていましたが、現在は自治体や学校、市民団体など社会全体に対象を拡大。持続可能な社会の実現に向けた活動を、顕彰を通じて広く社会に発信しています。

第29回「地球環境大賞」の大賞贈呈式でトロフィーを受け取る、あいおいニッセイ同和損保の金杉恭三社長(左)=2020年10月1日、東京都渋谷区(寺河内美奈撮影)


思考力高め社会の担い手を「NIE(教育に新聞を)で出前授業」

社会の担い手をつくる教育に関するこの分野は「全てのSDGsの基礎」とも呼ばれています。産経新聞では、記者による出前授業といったNIE(教育に新聞を)の取り組みを通じ、活字文化の発展や、子供たちの読み書き能力向上に資する「質の高い教育」の実現を図っています。
出前授業では新聞の紙面も活用し、思考力や表現力など、情報化社会を生きる子供たちに必要な実践的能力を高めてもらう手助けをしています。環境新聞の作成など、SDGsの他項目と関連する内容でも実施。東京都立大崎高校(品川区)での令和2(2020)年1月の出前授業では、食べられるのに捨てられる食品ロスが国内で年間600万トン以上に及ぶデータなどを示し、記者がリサイクルの現状を解説しました。
また、ウェブサイト「産経ニュース」では、旬の話題を子供向けに解説する「週刊学ぼう産経新聞」(毎月第1~4週の日曜付)のワークシートなどを公開し、誰でも無料で活用できるようにしています。



SDGs(エスディージーズ)とは

「Sustainable Development Goals」の略称で「持続可能な開発目標」と訳される。貧困、気候変動、海洋汚染といった地球規模の課題解決のための17のゴール(目標)を2030年までに達成し、将来にわたってよりよい世界を目指そうとする国際目標で、2015年に国連で採択された。地球上の「誰一人取り残さない」ことを宣言しており、ゴールの下にはより具体的な169のターゲット(達成基準)が設けられている。
日本政府は2016年、首相を本部長とするSDGs推進本部を設置。2019年策定の「SDGsアクションプラン2020」には、海洋プラスチックごみ対策、女性や若者、障害者の活躍などが盛り込まれた。


SDGメディア・コンパクトとは
 
SDGsに関する報道を充実させ、その達成に向けた行動を活性化させることを目的に、世界中の報道機関とエンターテインメント企業が参画。国連によると世界で100以上の媒体が署名しており、160カ国をカバーし、20億人以上にSDGsに関連する記事や番組を届けている。日本でもテレビ、ラジオ、新聞、出版、ウェブメディアなど約30社が署名している。